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効果的なのにあまり知られていないトリックや、巧妙なサトルティなど、私のお気に入りを紹介します。
2012年01月22日 (日) | Edit |
マジシャンは最初に1枚の特別なカード(例えばスペードのA)を見せ、ポケットに入れておきます。

続いて観客にデックを渡し、自由な枚数目のカードを覚えます。マジシャンはこの動作を一切見ませんので、観客のカードと枚数目は分かりません。この状態で、観客のカードとポケットの中のスペードのAが入れ替わります。

だいぶ前にご紹介したベンジャミン・アール氏のtwo card transpoと基本的な現象は似ていますが、決定的に異なるのは、マジシャンがポケットに入れるカードを最初に観客に見せられる点です。

カードを最初に見せられるということは、そのカードをスペードのAやジョーカー、サインカードなど、特徴的なカードにすることができるということです。これにより、交換現象のインパクトがかなり強められています。

観客のカード⇔演技の最初から印象的だった特別なカード
観客のカード⇔演技の中盤で急に登場したありきたりなカード

の違いです。前者の方が、現象をアピールしやすいのがお分かりいただけると思います。

もちろん、これだけでどちらの作品が優れている、と決められるものではありません。ベンジャミン・アール氏のtwo card transpoは、秘密動作の入り込む余地のないように見える無駄のない手続きに大きな魅力がありますし、加藤英夫氏の上記作品は、交換現象のクリアーさに加え、観客にカードをある程度預けられるという構造上の魅力があります。

そしていずれにしても演じるにはある程度の技量が求められます。パームやその他の技法を使いこなさなくてはならないだけでなく、それと並行して観客の関心を次々とコントロールする必要があるからです。

プロットがシンプルなので、使う技法や味付けなど、いろいろとアレンジ可能です。ベンジャミン・アール氏も、two card transpoの解説の中で、見せ方は状況に応じてさまざまに変わる、というようなことを言っているようです。

取り組むごとに、新たに発見がありそうです。両者を比較しながら試しても面白いかもしれません。

出典:加藤英夫 - Card Magic Library 第8巻
Cardician' Journal 加藤英夫のカードマジック研究報告から購入できます。


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2010年04月15日 (木) | Edit |
昨晩、和泉君にSkypeで見せてもらった技法です。

ベンジャミン・アールのDVDで見て練習までしてたのに完全に忘れてしまっており、「えっ何それ?」ときれいにひっかかってしまいました。

カードを1枚取り出す方法としてはかなり好きな部類です。片手でカードを分けるだけで、真ん中からAなどの目的のカードが飛び出してきます。相当リアルですし、何より変な派手さがないのが個人的にはたまりません。

見たことのないような特殊な動きも観客の目を引きますが、普通の動きが研ぎ澄まされている(ように見える)というのも、逆に凄みを感じます。もう一度ちゃんと練習してみたくなりました。

それにしてもこの人、あらためて見直してみて、他の技法もやたら上手いですね。それも何というか、マジックの技法が上手いのではなく、カードの扱いが上手いように見えるんです。力が抜けているからでしょうか。すごく高度なのに、角が取れているんですよね。かっこいいです。



2009年11月21日 (土) | Edit |
先日のモダクラ劇場の打ち上げでゆうきさんも話の流れでさわりを演じていました。曰く、「セカンドディールを使ったトリックの中では5本の指に入る名作」です。

ゆうきさんのmonthly Magic Lessonの最新号でも取り上げられていますし、大学のマジックサークルの大先輩、Sさんにも以前バリエーションを見せていただいたことがあります。きっと私より少し上の世代の方に大変馴染み深いトリックなんでしょうね。加藤英夫氏のCard Magic Library 第4巻(Cardician's Journal No.88、89参照)にも収録されています。

ユニークな現象です。

観客にカードを覚えさせ、デックに戻した後、デックのトップに置いておいたダイヤのAから10を表向きに配っていくのですが、観客の指定した枚数目だけ裏向きのままにしておきます。

例えば観客が7枚目を指定したとすると、ダイヤのA~6を配った後、1枚裏向きのカードがあり、続いて8~10を配るわけです。観客は何枚目を指定しても構いませんでした。ところが、この1枚だけ裏向きのカードを表向きにしてみると、観客の覚えたカードに変わっているのです。

う~ん。魅力的なプロットです。書いていて気が付きましたが、ホフジンサー・プロブレムにも似ていますね。私このトリックの成り立ちを詳しく知らないのですが、ひょっとしてエルムズリー流のバリエーションなのでしょうか?いずれにしても、エルムズリー氏は、頭脳派らしくすっきりとした解決策を生み出しました。この頭の良さにも、マジシャンは酔うわけです。

ただひとつ欠点を挙げるとすれば、簡単とは言えないということです。使う技法が技法ですから。

私あまりセカンドディールが得意ではないので、少しでも楽にできないかと考えて思いついたのが、単純なことですが、枚数を半分に減らすということです。つまり10枚でなく5枚で行います。まずはこうするだけで相当楽になりますし、ついでにテンポアップも図れます。

続いて、原案ではダイヤのカードの束を最初から表向きにしてテーブルに出しておくのですが、これを思い切ってやめてみました。流れとしては次のようになります。


観客が1枚カードを選んで覚えます。そのカードをデックに戻しよく混ぜます。

「今混ぜながら、ちょっとテクニックを使って、ある特別なカードを5枚集めました」と言ってトップの5枚を広げてみせます。
「5枚ありますが、1~5でどれでも好きな数字をおっしゃってください」
別の観客に好きな数字を指定させます。

5枚のカードを全て裏向きに配ります。ただし、観客の指定した枚数目だけを列から大きくずらして置きます。

「テクニックを使って特別なカードを5枚集めたと言いました。どんなカードか、見てみましょう」
「1枚目、2枚目・・・」と数えながらカードを順に表向きにしていきます。
ただし観客の指定した枚数目だけは裏向きのままにしておきます。
ダイヤのA~5が順番に出てきます(1枚を除く)。

「ここまでは指先のテクニックです。実はもうひとつ別のテクニックを使いました。お二人の心を読んだんです」

覚えたカードをコールさせ、裏向きのカードを表向きにしてみせます。観客のカードです。


どうでしょう。プロット自体が変質してしまっていますが、なかなか悪くないと思います。また書いていて気が付きましたが、改案の方向性がベンジャミン・アール氏の Shades of Hofzinser に似てますね(笑)。

カードを配る際に全て裏向きにするのは、観客からの注目度を下げるという狙いがあります。観客の指定した枚数目だけをずらしておくというのがメインの動作になりますので、他の4枚を配るときは無造作に行えますし、観客に視線を向けることもできるわけです。また、ずらすカードのところで一度配るのを止めて間を取ることもできます。こうすると、セカンドディールがさらに楽になります。また、フェアに見せられるところはゆっくり注目を集めて行うこともできるようになるのです。

ダイヤのカードの束を最初から提示しないのも同じ理由です。順番も含めて素性の知れたカードをもう一度配り直すからには、どこかでおかしなことをしないかと観客の注意が集まりますが、素性の知れない「ある特別な5枚」だと、観客としても疑うポイントが定まりませんので、その分見破られるリスクが減るのではないかと考えます。

ついでに言うと「枚数目」を指定させるのではなく、好きな「数字」を言ってもらうのもそうです。一連の「仕事」をする前には、枚数目には極力注意を引きたくないのです。

このようにあえていろいろと曖昧にしながら手続きを進めていきますので、下手をすると何をやっているのか自体が観客に伝わりにくくなる恐れがあります。そこで伏線となるキーワードとして「テクニック」「ある特別な5枚のカード」という言葉を予め入れておき、全ての仕事が終わってから、もう一度そのキーワードを使って何をしてきたかをさりげなく説明しなおす、という手順を取っています。

これはメンタルマジックで使われるエキボックによる後付けのテクニックを応用したものです。このあたりはゆうきさんの『一瞬で相手をリードするマジック心理術』に平易に解説されていますのでぜひご一読を。

思いついて間もないアイディアで、実演回数も乏しいですが、セカンドディールに絶対の自信の持てない私としては、つっかかりによるノイズを起こすリスクを抑えて、観客の印象の質を保つというこの戦略が、今のところは気に入っています。

一瞬で相手をリードするマジック心理術一瞬で相手をリードするマジック心理術
(2007/09/18)
ゆうき とも

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2009年10月22日 (木) | Edit |
ベンジャミン・アール氏らしい、非常にシンプルなカードの交換です。物足りなく感じる方もいるかもしれませんが、怪しい動作が削ぎ落とされているため、きれいに演じられると相当気持ち悪いと思います。

マジシャンは10枚のカードを広げ、観客に好きなカードのマークと数字、そして枚数目を見て覚えてもらいます。ところが観客がもう一度その枚数目のカードを見ると観客が覚えたカードではなく、マジシャンが覚えポケットにしまったカードに変わっています。ポケットのカードは、観客のカードに変わっています。観客が見て覚えたカードと、マジシャンが適当に選んだカードがいつの間にか入れ替わっていたというわけです。

10枚のカードの内、観客の覚えたカードがポケットに移動するマジックは、パームの習作としてよく本に紹介されていますが、ベンジャミン・アール氏はそれをひとひねりしています。観客のカードの位置を秘かにずらす原理そのものは変わっていないのですが、そのための技法とタイミングが非常によく考えられているのです。正直、完全に引っかかりました。また、パーム自体も、それをカバーする動きも大変自然です。しかも、これだけテクニックがあるにもかかわらず、それだけに頼らず、さらにこのトリックを不思議にするためにある工夫をしています。

これを人前で演じるには、相当の練習と勇気が必要な気がします。また、ある意味でマジシャンとして自己満足はしづらいトリックかも知れません。しかし、見た目のシンプルさを追求するという姿勢は見習うべきものがあると思います。

出典:Benjamin Earl - PAST MIDNIGHT Disc 3
FRENCH DROPで購入できます。



2009年06月24日 (水) | Edit |
お察しの通り、いわゆる Hofzinser Problem のバリエーションなのですが、前半の現象をごっそり落としてしまっています。削ぎ落としの美学を感じます。

あまりに良いので、本当はまず現象を見ていただきたい作品です。マジックの第一印象を大事にする方はこの先は読まずに DVD を買われた方が良いかも知れません。

ご存知ない方のために補足説明。Hofzinser Problem とは、J. N. Hofzinser が提唱した現象のひとつで、次のようなものです。


観客にカードを選ばせ、覚えてもらった後、デックに戻してよくシャッフル。

マジシャンは4枚のAにおまじないをかけると観客のカードと同じマークのAだけが裏向きになる。

続いてデックを広げると真ん中に1枚だけひっくり返っているカードがある。
これが観客のカード・・・と思いきや、先ほど裏向きになったはずのA。

先ほどのAを表向きにすると、観客のカードに変わっている。


ひとことで言えば、ツイスト現象と交換現象を織り交ぜたカード当てです。

多くのマジシャンがバリエーションを発表していますが、ベンジャミン・アール氏のこの作品では、ツイスト現象がありません。4枚のAの内、観客のカードと同じマークのAを見事抜き出した・・・かと思ったらもう観客のカードに変わっています。

ここで一般の観客はもちろん、マニアも「えっ」と声を上げます。

4枚のAのパケットに、観客のカードを紛れ込ませる隙がないように見えるからです。また、確かに先ほどまであったAが、完全に消えてしまったように見えるのです。

そう思わせる策略が手順の中にきちんと講じられています。それでいてプロットが単純で、見た目がすっきりしています。観客の頭を混乱させることがありません。優秀なトリックのお手本のようです。

ただ厄介なのは、ハンドリングです。ベンジャミン・アール氏は怪しさを微塵も感じさせずに軽々と演じてみせますが、特に最後の部分は、苦戦する方も多いと思います。私もそうでした。

ご本人のハンドリングをマスターすることはできませんでしたが、自分なりに納得のいくように多少動きを変えて演じています。骨は折れますが、裏にある考え方を学ぶ意味でも、練習する価値のある作品だと思います。

出典:Benjamin Earl - PAST MIDNIGHT Disc 1
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