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効果的なのにあまり知られていないトリックや、巧妙なサトルティなど、私のお気に入りを紹介します。
2009年07月16日 (木) | Edit |
これを「掘り出し物」のカテゴリに入れてご紹介するのは失礼かも知れませんね。故トミー・ワンダー氏の傑作の一つです。

いわゆる繰り返し系のトリックです。マジシャンの意図とは異なることが何度も何度も起こります。まず戸惑い、気を取り直すのですが、やはり思い通りにならず慌てる・・・。現象そのものよりも、その感情の起伏が面白い。いわゆるギャグやジョークではなく、マジシャンの振る舞いが観客を楽しませるのです。演技力を求められる手順です。

解説を聞いて、マジシャンが慌てていく様をどのように表現するか、そのための小道具の使い方など、非常に細かい部分まで考えられているのに感心させられます。

このタイプの手順を演じようとすると、必然的に「演技すること」とはどういうことかを考えなくてはなりません。そうしないと、ただの機械的な繰り返しとしか見えず、観客にとっては何がしたいのか分からないということになってしまうからです。

演技力がつくと、面白く演じられるトリックの幅も増えます。このトリックにチャレンジする価値は十分にあると思います。



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2009年07月08日 (水) | Edit |
この技法は荒木一郎氏の『テクニカルなカードマジック講座』で初めて知りました。「未来へのテレポーテーション」という作品の中で使われています。

この技法で起こせること、それは、テーブル上に置いてあった表向きのカードがいつの間にか別のカードに変わっている、という現象です。詳細は省きますが、まあミスディレクションを利用するわけです。カード・アンダー・ザ・グラスに似た感覚と言えば分かりやすいかも知れません。ラファエル・べネター氏も似たようなことをやっていますが、こちらの方が無理がないと思います。

私、実はこういう「いつの間にか」系の現象に目がないのです。うまくいけば観客に与える印象は強烈ですし、演じる方にリスクを冒す快感があるのもいいのかも知れません(笑)。

解説されている手順は、ばらばらに混ぜたカードの順がそろったりしながら、最後には表向きに置いておいたジョーカーが、いつの間にか観客の選んだカードに変わるというものです。

まずジョーカーが特別なカードとして紹介され、最後に現象を起こすまでテーブル上で控えているのですが、この特別なカードを「わざわざ」取り出すという演出は観客の注目をジョーカーに集めやすく、結果としてこの技法の秘密を見破られやすくなる気がするので、私はこのまま演じる勇気がありません。

かといって、まったく気にもしていなかったカードが別のカードに変わるのもインパクトが弱そうですし、あまりにも不意打ちで気が引けます。でも、何とかこの技法を使って観客を驚かせたい! そこで、次のようなプロットで手順を組み立ててみました。


3人の観客に1枚ずつカードを取ってもらい、覚えてもらいます。

デックに戻し、よく混ぜた後、3人のカードを順番に当てると宣言します。
ところが1人目のカードを当てようとすると2人目のカードが出てきます。
気を取り直して再度1人目のカードを当てようとすると今度は3人目のカードが出てきてしまいます。

マジシャンは焦ります。
しかしふと見ると、最初に取り出したカードが1人目のカードに変わっているのです。

目的のカードと違う、別の観客のカードを取り出してしまったということで、いったん注目は集まります。しかしこれは間違いということで何気なくテーブルに置き、マジシャンは再度チャレンジしようとする。この流れで、観客の注意はこのカードから自然に離れてしまいます。が、観客の記憶には確実に残ります。

そして最後に、「忘れていたけれどもついさっきまで注目していたカード」が、求めていたカードに変わるのです。

どうでしょう。見破られるリスクを減らしつつ、トミー・ワンダー氏のいうところの conflict も表現できそうな、面白いものになっているのではないでしょうか。感情表現を含めてきちんと演技できればという条件付きですが、我ながら良い手順ができたと思います。

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2009年06月30日 (火) | Edit |
ご存知の方も多いかもしれません。オランダが生んだ天才、故トミー・ワンダー氏のマジックです。

ご本人の演技を生で見たのは一度だけ。亡くなられる1年前、吉祥寺で行われたレクチャーに参加したのですが、演技、レクチャーとも、氏の魅力的な人柄と、マジックへの愛に溢れた感動的な内容でした。

解説されるのは、単なる方法ではなく、深い考察から導き出された氏のマジック理論。そのひとつひとつに含蓄があり、しかもそれを確かに体現されているので、本当に説得力があります。

中でも私が感銘を受けたのが、この Magic Ranch です。シンプルな現象ながら、観客の感情を揺さぶるプロット。確実に演じられるように用意された様々な準備。それでいて大胆なことをさらりとやってのける良い意味での図太さ。

最初に解説を聞いたとき、この「図太さ」の部分がどうしても気になりました。いくらなんでもばれるのではないか?(自分はきれいにひっかかったにもかかわらず!)

しかし彼は言います。「全然リスクなんてない。仮に気付かれたとしてもマジックは成功するし、気付かれなければ奇跡が起こせるんだから、やらない手はないでしょう?」

その言葉に、衝撃を受けました。自分は何と臆病にマジックをやっていたんだろう。そんな楽な考え方があったなんて!

それから、私のマジックに大きな変化があった・・・かどうかは分かりません。でも少しだけ、生きる上で前よりも楽な考え方ができるようになった気がします。そして楽するだけではありません。悠然としていられるための周到な準備の大切さも知りました。

トミー・ワンダー氏は、素晴らしいマジックだけでなく、幸せな人生を送るヒントを私達に遺してくれたのかもしれません。



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