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効果的なのにあまり知られていないトリックや、巧妙なサトルティなど、私のお気に入りを紹介します。
2009年11月21日 (土) | Edit |
先日のモダクラ劇場の打ち上げでゆうきさんも話の流れでさわりを演じていました。曰く、「セカンドディールを使ったトリックの中では5本の指に入る名作」です。

ゆうきさんのmonthly Magic Lessonの最新号でも取り上げられていますし、大学のマジックサークルの大先輩、Sさんにも以前バリエーションを見せていただいたことがあります。きっと私より少し上の世代の方に大変馴染み深いトリックなんでしょうね。加藤英夫氏のCard Magic Library 第4巻(Cardician's Journal No.88、89参照)にも収録されています。

ユニークな現象です。

観客にカードを覚えさせ、デックに戻した後、デックのトップに置いておいたダイヤのAから10を表向きに配っていくのですが、観客の指定した枚数目だけ裏向きのままにしておきます。

例えば観客が7枚目を指定したとすると、ダイヤのA~6を配った後、1枚裏向きのカードがあり、続いて8~10を配るわけです。観客は何枚目を指定しても構いませんでした。ところが、この1枚だけ裏向きのカードを表向きにしてみると、観客の覚えたカードに変わっているのです。

う~ん。魅力的なプロットです。書いていて気が付きましたが、ホフジンサー・プロブレムにも似ていますね。私このトリックの成り立ちを詳しく知らないのですが、ひょっとしてエルムズリー流のバリエーションなのでしょうか?いずれにしても、エルムズリー氏は、頭脳派らしくすっきりとした解決策を生み出しました。この頭の良さにも、マジシャンは酔うわけです。

ただひとつ欠点を挙げるとすれば、簡単とは言えないということです。使う技法が技法ですから。

私あまりセカンドディールが得意ではないので、少しでも楽にできないかと考えて思いついたのが、単純なことですが、枚数を半分に減らすということです。つまり10枚でなく5枚で行います。まずはこうするだけで相当楽になりますし、ついでにテンポアップも図れます。

続いて、原案ではダイヤのカードの束を最初から表向きにしてテーブルに出しておくのですが、これを思い切ってやめてみました。流れとしては次のようになります。


観客が1枚カードを選んで覚えます。そのカードをデックに戻しよく混ぜます。

「今混ぜながら、ちょっとテクニックを使って、ある特別なカードを5枚集めました」と言ってトップの5枚を広げてみせます。
「5枚ありますが、1~5でどれでも好きな数字をおっしゃってください」
別の観客に好きな数字を指定させます。

5枚のカードを全て裏向きに配ります。ただし、観客の指定した枚数目だけを列から大きくずらして置きます。

「テクニックを使って特別なカードを5枚集めたと言いました。どんなカードか、見てみましょう」
「1枚目、2枚目・・・」と数えながらカードを順に表向きにしていきます。
ただし観客の指定した枚数目だけは裏向きのままにしておきます。
ダイヤのA~5が順番に出てきます(1枚を除く)。

「ここまでは指先のテクニックです。実はもうひとつ別のテクニックを使いました。お二人の心を読んだんです」

覚えたカードをコールさせ、裏向きのカードを表向きにしてみせます。観客のカードです。


どうでしょう。プロット自体が変質してしまっていますが、なかなか悪くないと思います。また書いていて気が付きましたが、改案の方向性がベンジャミン・アール氏の Shades of Hofzinser に似てますね(笑)。

カードを配る際に全て裏向きにするのは、観客からの注目度を下げるという狙いがあります。観客の指定した枚数目だけをずらしておくというのがメインの動作になりますので、他の4枚を配るときは無造作に行えますし、観客に視線を向けることもできるわけです。また、ずらすカードのところで一度配るのを止めて間を取ることもできます。こうすると、セカンドディールがさらに楽になります。また、フェアに見せられるところはゆっくり注目を集めて行うこともできるようになるのです。

ダイヤのカードの束を最初から提示しないのも同じ理由です。順番も含めて素性の知れたカードをもう一度配り直すからには、どこかでおかしなことをしないかと観客の注意が集まりますが、素性の知れない「ある特別な5枚」だと、観客としても疑うポイントが定まりませんので、その分見破られるリスクが減るのではないかと考えます。

ついでに言うと「枚数目」を指定させるのではなく、好きな「数字」を言ってもらうのもそうです。一連の「仕事」をする前には、枚数目には極力注意を引きたくないのです。

このようにあえていろいろと曖昧にしながら手続きを進めていきますので、下手をすると何をやっているのか自体が観客に伝わりにくくなる恐れがあります。そこで伏線となるキーワードとして「テクニック」「ある特別な5枚のカード」という言葉を予め入れておき、全ての仕事が終わってから、もう一度そのキーワードを使って何をしてきたかをさりげなく説明しなおす、という手順を取っています。

これはメンタルマジックで使われるエキボックによる後付けのテクニックを応用したものです。このあたりはゆうきさんの『一瞬で相手をリードするマジック心理術』に平易に解説されていますのでぜひご一読を。

思いついて間もないアイディアで、実演回数も乏しいですが、セカンドディールに絶対の自信の持てない私としては、つっかかりによるノイズを起こすリスクを抑えて、観客の印象の質を保つというこの戦略が、今のところは気に入っています。

一瞬で相手をリードするマジック心理術一瞬で相手をリードするマジック心理術
(2007/09/18)
ゆうき とも

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